耐力壁は筋かいと合板どっちが良い?違いについて解説

地震大国である日本では、住まいの耐震性は切っても切り離せない重要なテーマです。耐震のなかでも「耐力壁」という言葉を耳にすることが多いのではないでしょうか。木造住宅において、耐力壁には「筋かい」と「面材(合板)」という2種類の主要な工法があり、どんな違いがあるのか、選ぶ上で何を基準にすれば良いのか、悩みや疑問を抱えている方も少なくありません。今回は、筋かいと合板のそれぞれの特徴やメリット・デメリットをお家まるごと制震シェルターが解説します。

この記事を監修した専門家

愛知淑徳大学 建築学部 教授
古田 智基

愛知県名古屋市出身。子供時代は活発に過ごし、大学では日本は有数な地震国であることから耐震工学を専攻。二十数年の企業経験を積み、愛知淑徳大学の教員に至る。

地震対策に欠かせない耐力壁とは?

耐力壁とは、地震の揺れや風圧など、建物に横からかかる力(水平力)に耐える壁のことです。一般的な壁が部屋を仕切る役割なのに対し、耐力壁は建物の変形や倒壊を防ぐ構造的な重要な役割を担っています。

例えば、箱を横から押すと潰れやすいですが、四隅に斜めの補強材を入れたり、板で覆ったりすると潰れにくくなります。この補強材や板が、家における耐力壁の役割に近いものです。耐力壁は建物全体をバランスよく支え、地震エネルギーを分散させることで倒壊を防ぎます。

木造住宅で主に使われる耐力壁の2種類の構造

木造住宅における地震の揺れに対抗するための耐力壁の種類は「筋かい耐力壁」と「面材耐力壁(合板)」の大きく2つがあります。どちらも耐力壁としての役割を担っていますが、構造の仕組みや特徴、そして耐震性の発揮の仕方に違いがあります。

筋かい:柱と梁で構成された四角いフレームに、斜めの木材を入れる伝統的な工法。三角形の構造で横からの力に抵抗。

面材(合板):柱と梁のフレームに構造用合板やダイライトなどのパネルを釘・ビスで打ち付け、壁全体で力を受け止める比較的新しい工法。

筋かいの特徴

筋かい耐力壁は、木造住宅の耐震性を確保するために古くから用いられてきた伝統的な工法です。斜めに配置された木材が建物の横からの揺れに抵抗し、住まいを守る役割を担っています。

筋かいのメリット

コスト効率が良い:面材と比較して材料費が安価で、新築やリフォームの予算を抑えられます。使用木材量が少なく、現場での加工が中心のため中間コストも抑制できます。

伝統的で確実な工法:日本で長年採用されてきた実績があり、多くの大工が施工経験を持つため品質が安定しています。

内装の自由度が高い:壁表面に合板を張る必要がなく、真壁づくりなど柱を見せるデザインも可能です。

面材(合板)の特徴

面材耐力壁は、構造用合板などのパネルを壁全面に張ることで、建物全体の耐震性を向上させる工法です。近年、高い耐震性能が注目され、新築の木造住宅で広く採用されるようになりました。

面材(合板)のメリット

高い耐力と安定品質:壁全体で力を受け止めるため、筋かいより地震への抵抗力が強く、建物変形を効果的に抑制します。工場での品質管理により、施工後の耐震性にばらつきが少なくなります。

開口部の自由度が高い:壁全体が一体となって耐力を発揮するため、筋かいのような配置制約がなく、窓やドアを比較的自由に設計できます。

気密性能が高い:壁全面に張られるため断熱材施工がしやすく、住宅の省エネ性能向上にも貢献します。

どちらを選ぶべき?筋かいと面材の違い

「耐力壁は筋かいと合板(面材)、どちらが良いの?」新築やリフォームを検討されている方が最も悩まれるポイントのひとつではないでしょうか。求める耐震性や予算、デザイン、施工方法など、さまざまな要素を総合的に判断する必要があります。

耐震性能の面で見てみると、

合板(面材):壁全体で力を受け止められる一方で、長時間続く揺れには徐々に弱くなり、繰り返しの地震動に対して釘が浮いて(変形して)しまい性能が急激に低下しやすい。

筋かい:木材を対角線に組み込むことで大きな地震力を受け止められるが、大地震では筋かいが折れるリスクがある

と、それぞれにデメリットもあります。

「筋かい=折れやすい」というイメージを持たれる方も少なくありません。しかし実際には、適切な設計で耐震性能を高めれば、筋かいが簡単に折れることはありません。さらにお家まるごと制震シェルターでは、折れや破損を防ぐために地震応答解析を用いた綿密なシミュレーションを実施し、安全性を確認したうえで施工が可能です。

耐力壁以外にも知っておきたい地震対策

耐力壁は地震に強い家づくりの基本であり、建物の倒壊を防ぐ上で不可欠な要素ですが、さらに安心を高めるためには、耐力壁以外の地震対策についても理解することが大切です。特に、建物の揺れを吸収し、内部の損傷を軽減する制震工法は、耐力壁と組み合わせることでより万全な地震対策となります。

制震ダンパーなど制震工法の役割

制震とは、建物に制震ダンパーなどの制震装置を組み込むことで、地震の揺れのエネルギーを吸収し、建物の揺れを軽減する工法です。これは、耐力壁が建物の変形を防ぐ「耐震」とは異なるアプローチで、揺れを「吸収」することに重点を置いています。揺れでダメージを受ける耐震性能を制震で揺れを吸収することで地震に強い家を維持できます。

制震は、新築時だけでなく、既存の住宅のリフォームや耐震補強の際にも導入が可能です。費用は耐力壁の補強に加えて数十万円から数百万円程度となることが多く、メーカーや工法によって特徴や価格帯が異なります。ご自身の住まいに求める安心のレベルや予算に合わせて、制震工法についても工務店や専門家に質問し、検討してみることをおすすめします。耐力壁と制震工法の組み合わせは、震度7クラスの地震から家族を守るための万全な対策となり得るでしょう。

耐力壁の違いは専門家への相談が大切

耐震性は、家族の命と財産を守る上で最も大切な要素の一つで、素人判断で耐力壁の種類を選ぶのではなく、必ず専門家に相談することが不可欠です。構造計算に基づいた最適な耐力壁の種類と配置を行うことで地震に強い家づくりが可能です。また、耐力壁だけでなく、制震ダンパーなどの制震を組み合わせることで、より万全な地震対策になるでしょう。

お家まるごと制震シェルターでは地震応答解析を用いたシミュレーションツールを提供しており、より耐久性の高い耐震設計を実現できます。地震応答解析から制震ダンパー「ダイナミックファスナー」をより効果的に配置し、損傷ゼロの耐震設計を実現できます。まずはお気軽にご相談ください。

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*兵庫県南部地震 震度7クラスの821ガル 92.2kineの原波で算出

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株式会社ACLIVE

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