近年、地震に強い家づくりに注目が集まる中、耐震等級や制震の重要性がますます高まっています。本記事では、耐震等級の基準や、特に耐震等級3においても制震ダンパーが必要とされる理由について解説します。さらに、制震のメリットやデメリットについても触れ、耐震+制震の組み合わせによって得られる安心できる家づくりについてご紹介します。地震対策を検討中の方はぜひご参考ください。
この記事を監修した専門家
西日本工業大学 デザイン学部建築学科
古田 智基
愛知県名古屋市出身。子供時代は活発に過ごし、大学では日本は有数な地震国であることから耐震工学を専攻。二十数年の企業経験を積み、西日本工業大学の教員に至る。
耐震等級とは?
住宅の耐震性能を評価する重要な指標として、「耐震等級」があります。これは「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく住宅性能表示制度の評価基準の一つです。耐震等級は1から3までの3段階に分かれており、数字が大きくなるほど耐震性能が高くなります。等級1は建築基準法レベルの最低限の耐震性能を示し、等級2と等級3はそれぞれ上乗せされた性能を持ちます。
耐震等級1
耐震等級1は、建築基準法で定められた最低限の耐震性能を満たす水準です。数百年に一度程度発生する震度6強から7程度の地震に対して、建物が倒壊や崩壊しないレベルの強度を持っています。また、数十年に一度発生する震度5程度の地震では住宅が損傷しない程度の性能を有しています。
ただし、建築基準法ギリギリに設定されている場合には、震度5強~6弱程度の地震に対して損傷を受ける可能性があるため注意が必要です。震度6強以上では、倒壊は免れても、補修や状況によっては建て替えが必要になることもあります。
耐震等級2
耐震等級2は、平たく言うと耐震等級1の1.25倍の地震力に耐えられる性能・耐震強度の水準を持ちます。「長期優良住宅」の認定条件として、耐震等級2以上が求められています。
また、災害時の避難所として指定される学校などの公共施設でも、耐震等級2以上の強度を持つことが必須とされています。震度6強~7程度の地震が発生した場合でも、一定の補修程度で住み続けられるレベルの性能を備えています。ただし、熊本地震のように震度7の大きな揺れが2回発生すると、倒壊するリスクがあります。
耐震等級3
耐震等級3は、住宅性能表示制度で定められた最高レベルの耐震性能を持ち、耐震等級1の1.5倍の地震力に耐えられる水準です。消防署や警察署など、災害時の救護活動・災害復興の拠点となる施設の多くがこの等級で建設されています。
大きな地震を受けてもダメージが少なく、その後も住み続けられる性能を持ちます。2016年の熊本地震では、震度7の揺れが立て続けに2回発生しましたが、等級3の住宅は2度の震度7に耐えていたことが専門家らの調査で明らかになっています。
耐震等級3相当
耐震等級3相当とは、耐震等級3を取得できる耐震性がありながら、認定機関による審査を受けていない住宅を指します。正式に耐震等級3を取得するためには、審査資料の作成や審査費用などで10~30万円程度の費用が必要となります。このため、耐震等級3と同等の強度を持ちながらも、正式な認定を受けないケースが見られます。
ただし、第三者機関による確認を受けていないため、本当に耐震等級3の性能を満たしているのか確認することができず、地震保険料の割引や住宅ローンの金利優遇といった制度も利用できないというデメリットがあります。
制震とは
制震とは、地震による揺れのエネルギーを吸収して建物の振動を抑制する技術です。建物自体の強度を高める耐震とは異なり、制震では制震装置(制震ダンパー)を設置することで地震の揺れを制御します。
代表的な制震装置である制震ダンパーは、ゴム、鋼材、オイルなどの素材を用いて揺れを吸収する仕組みを持っています。近年、耐震だけでなく制震を取り入れた住宅が増えているのは、地震による建物へのダメージを軽減する必要性が高まっているからです。
メリット
制震の最大のメリットは、くり返し発生する大地震に対する強さです。耐震構造だけの住宅は、地震の度に少しずつダメージが蓄積されていきます。
一方、制震装置を備えた住宅では、地震の揺れを吸収することでダメージの蓄積を抑制できます。これにより、建物の耐震性能を長期間維持することが可能になります。また、建物内部の振動も軽減されるため、家具の転倒(ただし、基礎と直接緊結されている1階部分は除きます)や内装材の損傷といった二次被害も防ぐことができます。
さらに、免震構造と比較すると導入コストがとても抑えられ(免震構造の1/10以下)、装置によってはメンテナンスフリーで使用できるという利点もあります。
デメリット
制震ダンパーなど装置単体では、建物の倒壊を防ぐことはできません。制震は地震の揺れを吸収する技術であり、建物自体の強度を確保するものではないからです。そのため、制震装置を設置する場合でも、適切な耐震性能を確保することが非常に重要です。
また、地盤の影響を受けやすいという特徴があり、地盤が弱い場合は制震装置の効果が十分に発揮されないことがあります。そして、制震装置の効果は、その設置場所や数にも大きく左右されます。適切な位置に必要な数の制震装置を設置しなければ、期待通りの制震効果は得られません。これらのデメリットを踏まえ、制震は必ず耐震と組み合わせて導入することが重要です。
詳しくは下記ページをご覧ください。
耐震等級3でも制震は必要?
「耐震等級3があれば十分ではないか」という声を耳にすることがありますが、実は耐震等級が高い住宅でも制震装置は重要な役割を果たします。なぜなら、いかに耐震等級が高い住宅であっても、大きな揺れに何度も見舞われると接合部などに徐々に弛みが生じ、最終的には倒壊に至るリスクがあるからです。制震装置を用いることで、建物の構造にかかる負荷が軽減され、耐震性能の維持につながります。
地震大国の日本において求められるのは、地震の後でも安心して住み続けられる住宅です。実際、耐震等級3にするよりも、等級を下げてでも制震ダンパーを組み合わせる方が、住宅が受けるダメージを効果的に減らすことができます。ただし、制震装置は正しく設置してこそ効果を発揮します。住宅の構造に基づいて適切な個数を適切な部位に取り付けることが重要で、きちんと計画せずに設置すると、かえって建物に負荷をかけることになりかねません。
さらに、制震装置を設置する場所には耐力壁を作れないケースが多いため、バランスの取れた配置が必要になります。費用と安全性のバランスを考慮しつつ、工務店さんが主体的にしっかりした技術に基づいた制震装置の導入を提案することが、長期的な視点での満足度の高い家づくりにつながります。
耐震+制震でくり返しの地震に強い家づくりを
耐震等級3の住宅は高い耐震性能を持っていますが、地震の度に建物は少しずつダメージを受け、その蓄積により耐震性能は徐々に低下していきます。そのため、地震による建物へのダメージを軽減する制震装置の導入が、長期的な住宅の安全性を確保する上で重要となります。
お家まるごと制震シェルターが提供する制震ダンパー「ダイナミックファスナー®」は、金属と高減衰ゴムのハイブリッド構造を採用した画期的な制震装置です。筋かいに設置する分散配置型の設計により、どの方向からの揺れにも対応し、建物の揺れを95%以上軽減する性能を発揮します。また、耐久性に優れた素材を使用しているため、100年という長期の製品保証を実現しています。
施工も簡単で、設置コストをとても抑えられるのもダイナミックファスナー®の特長です。大切な家族の命と財産を守るため、ダイナミックファスナーを導入してみてはいかがでしょうか。耐震性能と制震性能を兼ね備えた、より安心できる家づくりを実現しましょう。