地震発生時にニュースなどで「揺れ幅」という言葉を耳にしたことはありませんか。地震の大きさや建物の高さなどで建物の揺れる幅が変わるという印象があるかと思いますが、他にもさまざまな起因があります。ここでは、揺れ幅の基本的な概念や揺れ幅の計算、計算から分かる被害の見通しについてお家まるごと制震シェルターが解説します。
この記事を監修した専門家
西日本工業大学 デザイン学部建築学科
古田 智基
愛知県名古屋市出身。子供時代は活発に過ごし、大学では日本は有数な地震国であることから耐震工学を専攻。二十数年の企業経験を積み、西日本工業大学の教員に至る。
揺れ幅とは
そもそも揺れ幅とは、広義的な意味で「静止状態から最大変位までの距離」を指します。
地震関連の情報でよく耳にする揺れ幅とは、一般的には地盤を原点として建物が水平方向に揺れた幅を表すことが多いです。
揺れ幅は単に地震の強さだけではなく、同じ震度の地震でも揺れ方や被害が大きく異なる場合があります。例えば、地盤や地震動の特性などによって建物の揺れ幅が大きく異なります。
地盤
建物の構造だけでなく、建物が立地する地盤の性質によっても大きく変化します。軟弱地盤は揺れが増幅されやすく、建物が大きく揺れる傾向にある一方、固い地盤は揺れの増幅が少ないため、建物にかかる負担(荷重)が比較的少なくなります。
こうした地盤の特性を把握するためには、事前の地盤調査が欠かせません。調査結果を基に、適切な基礎工事や耐震対策が取られることで、地盤による揺れ幅の増幅リスクを軽減できます。揺れ幅に問題があった場合は、地盤改良や制震装置の導入など、揺れを抑えるための工夫が重要です。
地震動
地震動とは、地震が発生した際に地面が揺れる動きのことです。地震動の特性は、地震の規模や震源の深さ、地盤の性質によって異なり、揺れが伝わる地域や建物に与える影響も異なります。
また、長周期地震動や短周期地震動といった地震動の性質(特性)によっても、建物や構造物に与える影響が変わります。
長周期地震動
長周期地震動は、数秒から数十秒といった長い周期でゆったりとした大きな揺れを伴う地震動です。特に高層ビルや長い橋、タワーなどの背の高い(固有周期の長い)構造物に大きな影響を与えます。
周期が長い(長周期):1回の揺れが継続する時間が長く、数秒から数十秒程度の周期で発生。
ゆっくりとした揺れ:大きく、ゆったりとした揺れが特徴。固有周期の長い建物が地表面と一緒にゆっくりと大きく動く。
広範囲に影響が及ぶ:震源から遠い場所でも、地盤を伝わって広い範囲に揺れが伝わる。
短周期地震動
短周期地震動は、周期が短く、1秒以下から数秒程度の速い揺れが特徴です。震源が浅く、震央に近い地域で発生しやすいです。特に直下型地震などでは、短周期の強い揺れが直接的に建物を襲うことが多いです。
周期が短い:0.1秒から1秒程度の短い周期で、早い振動が続く揺れ。
激しい振動:上下や左右への急激な振動を伴うため、人や建物に瞬間的な衝撃を与えやすい。
振幅は小さいが衝撃が強い:振幅(揺れ幅)は比較的小さいことが多いですが、短い周期で強い衝撃が繰り返される(加速度が大きい)ため、建物に与えるダメージが大きい。
揺れ幅を数値化できる層間変位
層間変位とは、建物の各階ごとに生じる横方向の変形量を示す指標で、地震や風などの外力によって生じる揺れ幅を数値化したものです。
具体的には、上階と下階の位置のズレを測定し、建物がどの程度変形しているかを把握します。
特に地震時には、層間変位が大きいと建物の強度や安全性が損なわれ、柱や壁のひび割れ、倒壊リスクが増加します。揺れ幅は、層間変位や層間変形角などに数値化できます。各階ごとの水平変位を基に計算され、住宅の耐震性や揺れの影響を数値で示せます。詳しくは下記ページをご覧ください。
揺れ幅の計算で一般住宅の被害想定がわかる
揺れ幅を数値化する層間変位や層間変形角をもとに、地震発生時に具体的にどのような被害をもたらすのかも試算が可能です。
被害状況 | 変形 | 傾き |
---|---|---|
無被害(ほぼ無被害) 漆喰壁などの一部に軽微なひび割れが発生するが、比較的容易に修復可能 | 2cm以下 | 1/120 1/200以下 |
小破(継続使用可) 土台と基礎の境目、窓の周辺などにひび割れが発生する。修復可能。 | 2-5cm以下 | 1/120 〜 1/60 |
中破(かなりの修復費用) 内外壁の仕上げに大きなひび割れが入る。瓦が落ちる。かなりの修復費用が発生。 | 5-10cm以下 | 1/60 〜 1/30 |
大破(避難生活・修復困難) 内外壁の大きな剥落、柱の傾きが大きい。修復が困難。 | 変形10cm以上 | 1/30 〜 1/10 |
倒壊(命を落とす可能性大) 室内空間がなくなり、重大な損害。命を落とす可能性が極めて高い。 | – | 1/10以上 |
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揺れのシミュレーションは、西日本工業大学、横浜国立大学、早稲田大学との共同研究で生まれた簡単に入力できる地震応答解析ソフトで行います。1~3階まで多種の耐力壁種類を選んで入力するだけで10,000パターン以上におよぶ解析が可能で、1度の地震だけでなく実際に起こりうる余震のシミュレーションも可能です。
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