家の揺れ幅がわかる!層間変形角(層間変位)が大切です!

どんなに硬い鉄でも、力を加えれば変形します。建物も例外ではありません。地震はもちろんのこと、重い物をずっと置いていたり、ときに強い風が吹いたりすれば、それに応じて揺れたり変形したりしています。

建築基準法では、地震や強風に対してどれだけ建物が変形してもよいかを一般的な木造住宅には規定していません。しかし、地震等による変形を確認することは非常に大切なことになります。まずは、「建物の変形(形が変わること)」や変位(位置まで変わってしまうこと)」から見ていきましょう。

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*兵庫県南部地震 震度7クラスの821ガル 92.2kineの原波で算出

建物は、横方向のズレがやばい

建物は、地震、台風といった外部の力による変形、乾燥収縮などの材料特性による変形、温度変化などの周辺環境に起因する変形など様々な要因で変形します。
こうした各部材の変形が積み重なり、建物に元あった場所から位置が変わってしまう「変位」が生じます。変位は、鉛直変位(縦方向)と水平変位(横方向)の2種類があります。
地震や風は水平方向に作用するので基本的には水平変位を引き起こします。
大事なのは地震時の水平変位です。「高層階の方が揺れる」というイメージをほとんどの人は持っているでしょう。地震や風により建物に水平方向の力が生じると、2階よりも3階、3階よりも4階の水平変位が大きくなります。これを地盤を原点としての変位、絶対変位と言います。建物の損傷を考える場合には、絶対変位ではなく、各階層の変位である「層間変位」が重要になってきます。

一階と二階の床位置のズレが起きる?!

層間変位とは、上下階の床と床との変位差のことであり、「層」とは、建物各階の床から床までの間のことを指します。
例として、2階の床が20cm元の位置から水平に変位した時、2階の柱はどうなっているでしょうか。実はこれだけでは2階の柱の状態は分かりません。2階の床が20cmズレていたとしても3階の床(2階建ての場合は天井)が1cmしかズレていなかった場合、1階の柱は大変なことになっている可能性がありますが、2階の柱自身はほとんど変形していないことになります。
2階の柱にとって大切なのは、2階の床と3階の床の変位差である2階の層間変位となります。

建物の損傷を考える際に、「層間変位」が重要だということは、お分かりいただけたと思いますが、例え「層間変位」が同じだとしても階が違った場合、各部材が置かれている状態は同じだとは言えません。同じ層間変位であれば、高い階の方が緩やかに変形していることになります。
「層間変位角」という「層間変位」をその階の高さで除した数値があり、「層間変位角」を比べることで、各階の変形の度合いを比べることができます。損傷が発生するかどうかを予測するためには、「層間変形角」を算出し、各階(層)での揺れ幅を算出することが大切です。

耐震等級だけに頼らず、層間変形角Rを見ましょう。

木造住宅の損傷を防ぐために、揺れ幅を示す「層間変形角R」は1/120rad以内に(できれば1/200radを)!

建築基準法では、一般的な木造住宅を除いた高さ13m超または軒の高さ9m超の木造特殊建築物をはじめとする特定建築物に関しては、「層間変形角が1/200rad以内であること」、木造在来工法など地震力による構造耐力上、主要な部分の変形によって建築物の部分に著しい損傷が生ずるおそれのない場合には、「層間変形角が1/120rad以内であること」と定めています。

とはいえ、1/120radは、釘のめり込みや引き抜けなどが発生する可能性が非常に高くなります。大切な家と命と財産を守るためには、1/200rad以内を目指していきましょう。筋かいなどの耐力壁によって地震に耐える力を持たせながら、そこに、揺れ(地震エネルギー)を吸収して揺れにくくする制震性能を合わせることではじめて、地震に強い家が完成します。

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