家の耐震性能を高めるためには、耐力壁の量を適切に確保することが重要ですが、その耐力壁の強さを表す指標が「壁倍率」です。では、壁倍率とはどのようなものなのでしょうか?また、制震ダンパーを取り付けることで壁倍率はどう変化するのでしょうか?
耐震性能を守る制震ダンパー「ダイナミックファスナー」を提供しているお家まるごと制震シェルターが、壁倍率の基本的な考え方について分かりやすく解説します。これを読めば、壁倍率への理解が深まり、お客様に地震に強い家づくりを提案する際に役立つこと間違いなしです。
この記事を監修した専門家
西日本工業大学 デザイン学部建築学科
古田 智基
愛知県名古屋市出身。子供時代は活発に過ごし、大学では日本は有数な地震国であることから耐震工学を専攻。二十数年の企業経験を積み、西日本工業大学の教員に至る。
壁倍率とは
壁倍率とは、建物が横方向の力に耐える「耐力壁」の強度を表す数値です。数値が高いほど、地震の横揺れや台風など水平方向の力に強いと評価されます。
壁倍率の数値は、壁量計算を行う際に使用するものです。建物を建てる際には、建築基準法で規定された耐力壁の量を確保する必要があり、耐力壁の長さに壁倍率を乗じることにより、必要な壁量を計算します。
耐力壁に用いられる木材のサイズや筋かいの有無などの組み合わせにより、壁倍率は0.5〜5の幅で設定されています。単位は「倍」で、最大値は5です。壁倍率1.0倍は、壁の長さ1m当たり1.96kNの水平荷重に耐えられることを意味しています。
そもそも耐力壁とは?
木造住宅において、柱や梁だけでは地震などの水平方向の力に対する強度がまったく不十分です。そこで、横方向の力に耐えるために設置されたものが「耐力壁」です。
耐力壁にはさまざまな種類がありますが、柱・梁・土台で構成された四角い枠組みに、斜めの筋かいを入れたものが一般的です。この筋かいによって、地震の横揺れや台風の風圧に耐える性能が確保されます。
木造住宅の工法には軸組工法と枠組壁工法の2種類があります。軸組工法では、筋かいによる耐力壁が多いのに対し、枠組壁工法では面材を張った壁そのものが耐力壁の役割を果たしており、筋かいを使用する必要はありません。いずれにしても、木造住宅の耐震性を確保するためには、耐力壁は不可欠な存在なのです。
まとめると、壁倍率は耐力壁の強さを表す指標であり、木造住宅の耐震設計に欠かせない考え方だといえるでしょう。耐震性の高い家づくりのためには、壁倍率を適切に考慮することが重要です。
壁倍率の定め方
木造住宅における壁倍率の定め方は、建築基準法施行令第46条によって規定されています。この基準では、耐力壁を構成する軸組の種類によって、次のように壁倍率が定められています。
軸組の種類 | 倍率 | |
---|---|---|
(1) | 土塗壁又は木ずりその他これに類するものを柱及び間柱の片面に打ち付けた壁を設けた軸組 | 0.5 |
(2) | 木ずりその他これに類するものを柱及び間柱の両面に打ち付けた壁を設けた軸組 | 1 |
厚さ1.5cm以上で幅9cm以上の木材又は径9mm以上の鉄筋の筋かいを入れた軸組 | ||
(3) | 厚さ3cm以上で幅9cm以上の木材の筋かいを入れた軸組 | 1.5 |
(4) | 厚さ4.5cm以上で幅9cm以上の木材の筋かいを入れた軸組 | 2 |
(5) | 9cm角以上の木材の筋かいを入れた軸組 | 3 |
(6) | (2)から(4)までに掲げる筋かいをたすき掛けに入れた軸組 | (2)から(4)までのそれぞれの数値の2倍 |
(7) | (5)に掲げる筋かいをたすき掛けに入れた軸組 | 5 |
(8) | その他(1)から(7)までに掲げる軸組と同等以上の耐力を有するものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの | 0.5から5までの範囲内において国土交通大臣が定める数値 |
(9) | (1)又は(2)に掲げる壁と(2)から(6)までに掲げる筋かいとを併用した軸組 | (1)又は(2)のそれぞれの数値と(2)から(6)までのそれぞれの数値との和 |
表中の(2)~(4)の筋かいをたすき掛けに入れた場合、壁倍率は元の数値の2倍となります。例えば、厚さ3cm以上、幅9cm以上の木材を用いた軸組で、筋かいをたすき掛けに入れた場合、壁倍率は「1.5×2」で3倍となります。
さらに、表中の(1)または(2)の壁と、(2)から(6)までの筋かいを併用する場合の壁倍率は、(1)または(2)のそれぞれの数値と、(2)から(6)までのそれぞれの数値との和になります。例えば、厚さ1.5cm以上、幅9cm以上の木材の筋かいを入れた軸組(壁倍率1倍)と、厚さ3cm以上、幅9cm以上の木材の筋かいを入れた軸組(壁倍率1.5倍)を組み合わせた場合、壁倍率は「1+1.5」で2.5倍となります。
このように、建築基準法施行令第46条では、軸組を構成する木材の厚さや幅、筋かいの組み合わせ方によって、壁倍率が明確に定められています。
制震ダンパーと壁倍率
制震ダンパーは、地震の揺れを吸収することで建物へのダメージを軽減する装置です。制震ダンパーの機能性の中で、壁倍率を強調するタイプとしないタイプがあります。制震ダンパーの機能性で壁倍率を強調する・しないは、それぞれ地震対策の目的が異なるのが理由の一つです。
壁倍率を強調する制震ダンパー
壁倍率を強調する制震ダンパーは、「倒壊防止」を主な目的としています。これらのダンパーは、建物が大きく変形し始めてから制震機能を発揮します。つまり、建物の耐震性能が低下した後に、倒壊を防ぐために作用するのです。ただし、この段階では建物にある程度の損傷が生じている可能性が高く、地震後も住み続けることが難しくなる可能性があります。
壁倍率を強調しない制震ダンパー
一方、壁倍率を強調しない制震ダンパーは、「損傷防止」に主眼を置いています。これらのダンパーは、建物の変形が小さい初期段階から効果を発揮します。建物が損傷する前に地震のエネルギーを吸収し、建物にかかる負荷を軽減するのです。建物の耐震性能を維持しているため、地震後も住み続けることができる可能性が高まります。
このタイプでは、繰り返し起こる大きな地震に対して有効です。初期の揺れから制震機能を発揮するため、建物の損傷を最小限に抑えることができます。これにより、2回目以降の地震にも建物が耐えられる可能性が高くなるのです。
両タイプに共通しているのは、制震ダンパーの設置には建物の耐震性能を十分に確保していることです。高い耐震性能を確保した上で、制震ダンパーを組み合わせることが理想的だと言えます。
制震ダンパーなら、お家まるごと制震シェルターへ
本記事では、建物の耐震性を表す指標である「壁倍率」について解説しました。壁倍率とは、耐力壁の強さを数値化したもので、建築基準法で定められた計算方法に基づいて算出されます。壁を構成する軸組の種類や筋かいの有無によって、壁倍率は0.5倍から5倍の範囲で設定されています。
建物の耐震性能を高めるために、まずは十分な耐力壁を確保することが重要ですが、さらに制震ダンパーを組み合わせることで、地震に強い家づくりが可能になります。
お家まるごと制震シェルターの制震ダンパー「ダイナミックファスナー」は、筋かいに取り付けるだけで高い制震効果を発揮する製品です。
耐震性能を持たせた住宅とダイナミックファスナー®を組み合わせることで、建物の揺れ幅を最大95%低減し、大地震による木造住宅の損傷を防ぎます。
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日本は地震大国です。お客様に末永く安心して暮らしていただける住まいを提供するためには、耐震性と制震性のどちらも欠かせません。ダイナミックファスナーを採用した地震に強い家づくりに興味のある方は、ぜひ一度ご相談ください。